「京都に移住したい・・・」
そう考えたとき、多くの方がまず思い浮かべるのは京都市内ではないでしょうか。町家、清水寺、鴨川。観光地としての京都のイメージがそのまま「暮らす場所」としての候補にもなりやすいのは自然なことです。
しかし、京都府は京都市内だけではありません。私は3年前(2023年9月)、京都市内から車で1時間ほどの南丹市という、山と川に囲まれた田舎に移住しました。
この記事では、3年間の移住生活で実際に見聞きしたことを、できるだけ包み隠さずお伝えします。良いことも、そうでないことも。移住を検討している方が「知らなかった」で後悔しないための、一つの判断材料になればと思います。
田舎の定義と地域共同体の成り立ち
田舎とは、都会から離れた、人家の少ない、たいてい田畑や山林に囲まれており開けていない、長閑で辺鄙な地域のことである。
田舎 – Wikipedia
田園(でんえん)、郷(ごう、さと)、鄙(ひな)ともいう。また、「田舎」は故郷を指す場合もある。
人口や住宅がまばらで辺鄙な地域は当然に不便です。
スーパーも病院も、都会のようにすぐ近くにはありません。だからこそ、地域の方々は昔から共同体を作り、助け合いながら生活を成り立たせてきました。この仕組みは、令和の時代も残っています。
南丹市には「日役(ひやく)」と呼ばれる仕組みがあります。年に数回、地域の共有施設や河川の草刈り、清掃作業などを住民総出で行うものです。誰かに任せるのではなく、自分たちの手で地域の環境を維持する。これが田舎の暮らしの土台になっています。
こうした共同体には、時に厳しい一面もあります。かつて「村八分」という言葉が生まれた背景には、地域の助け合いから外れることへの重い制裁がありました。今の南丹市でそうした極端な事例を見聞きしたことはありませんが、「共同体から孤立することへの抵抗感」という空気は、形を変えて今も残っていると感じます。

「村八分」の語源について、美山町在住の元校長先生から伺いました。
・十の共同行為のうち、放置すると他の人間に迷惑のかかる「葬式」と「火事の消火活動」(二分)のみ手伝い、それ以外の交流を絶つ。
という衝撃的な内容でした。
なお、共同体の関わり方は地域によっても差があります。たとえば消防団活動一つとっても、町域が広く消防署から離れた美山町と、消防署が比較的近い他の3町とでは、負担の実感が違うように感じます。
年間行事・季節のリズム
田舎の1年は、季節の行事とともに回っていきます。ただし、これから伝えるのはあくまで一例です。南丹市、あるいは日吉町・美山町とひとくくりにできるものではなく、同じ地区内でさえ、行事の内容や時期は驚くほど違います。
たとえば日吉町佐々江地区は、上佐々江・中佐々江・下佐々江という3つのエリアに分かれていますが、年間行事はそれぞれ異なります。
・上佐々江:【6月】川刈り、【お彼岸】クリーン作戦、【8月】愛宕、金毘羅宮清掃
・中佐々江:【6月】川刈り、【8月】地蔵盆、【11月】環境美化作業
・下佐々江:【8月】秋葉山/熊野山/会議所清掃、【11月】クリーン作戦
また“常会”と呼ばれる自治会組織の会合は1~3回/年とエリアで回数が異なります。
車で数分しか離れていない集落同士でも、これだけ内容が違います。「地蔵盆をやる地区」と「やらない地区」がすぐ隣にある、というのが田舎のリアルなところです。
一方、園部町摩気地区のように、地域全体でより体系立った年間行事を持つ場所もあります。
1月の新年式・とんど、2月の節分祭、4月の水路掃除、6〜7月の草刈り、8月の夏祭り・地蔵盆、9月の放生会、10月の秋祭り・運動会、11月の文化祭、12月の正月準備
と、稲作を中心とした農業のリズムに沿って、1年を通じて行事が組まれています。

私の居住地域で地域住民が集まるのは3月の常会、8月の地蔵盆がのみです。
※別途、お墓を持っている方のみ参加の共同清掃の日があります。
上記とは別に、小学校単位でのお祭りもあります。
「●●組」、「●●区」、「●●(小学)校区」、「●●町」と構成単位が混ざり合った部分があります。これは過去の市町村合併や小学校の統廃合などの経緯があるためです。
南丹市の町名・地域情報・地図も併せてご覧ください。
このように、行事の多さ・濃さは地区によってかなり幅があります。
共通して言えるのは、「共同作業」と「お祭り・法事ごと」が1年の骨格を作っているということです。
- 共同作業系:河川や水路の掃除、神社・お寺・公民館の清掃、道の草刈り(南丹市では「日役」「区作業」「総出」などと呼ばれます)
- お祭り・法事系:夏祭り、地蔵盆、秋祭り、お盆行事、正月行事
共同作業は、基本的に義務です。参加できなかった場合、「不参金」という形でお金を払う地区もあります。行事も日役も表向きは強制ではないとされていますが、「自分たちで地域を守る」という意識のもと、実質的には参加が前提になっているケースがほとんどです。
田舎に移住を検討する際は、「行事が多いらしい」という大まかな情報だけでなく、実際に住む予定の集落で、年間にどんな行事・共同作業があるのかを、できれば移住前に確認しておくことを強くおすすめします。
区費や常会費の額も、地区によって月500円程度から年数万円規模まで幅があり、これも生活コストに直結します。
お金のリアル
田舎暮らしで確実に変わるのが、お金の感覚です。「田舎は生活費が安い」というイメージを持たれがちですが、実際には上がる費用と下がる費用が両方ある、というのが正直なところです。
家(土地)は確実に下がります。食は大きな差はない印象を持っています。
それ以外の移住して気になった部分を3点に絞って紹介します。
インフラ料金(公共料金)
- 電気代:関西電力の電気は日本全体で比較して割安
- ガス代:プロパンガスになるため、都市ガスエリアより割高(目安として2倍⁉)
- 水道代:日本の平均値ぐらい(2026年時点)
※水道は自治体によって料金差が大きいため、評価が難しいです。
冬場は灯油や暖房費も見逃せません。南丹市は積雪もある地域のため、暖房を使う期間・頻度そのものが都市部より長くなります。
一方、夏場は日中は都市部と同様に暑さはありますが、寒暖差が大きく朝晩は冷房をつけずに過ごすこともあります。
車両関連の支出
都市部では車が不要だった方も、田舎では車が最低1台、世帯によっては1人1台が必要になります。車検代、保険代、税金、(積雪地域であれば)冬タイヤ代など、維持費は台数分かかります。
そしてガソリン代です。「スーパーまでちょっと」の距離が、片道10km前後になることも珍しくありません。仕事や子どもの送迎にも車を日常的に使うようになるため、ガソリンスタンドに立ち寄る回数は都市部にいた頃とは比べ物にならないほど増えます。
一方で、これまで車を利用していた方であれば、高速代や駐車場代が減るケースもあります。ただし、公共交通機関中心の生活をしていた方にとっては、このギャップは想像以上に大きく感じられるはずです。
自治会費・地域行事にかかる費用
自治会にあたる「区費」「常会費」は、都市部の町内会費(月数百円程度)と比べて、田舎では明らかに高くなる傾向があります。前章で触れた通り、地区によって月500円程度のところもあれば、年間で数万円規模になるところもあり、この差はかなり大きいです。
区費・常会費の使い道は、外灯やゴミ集積所の維持管理、生活改善センターや消防施設の維持管理、災害時の設備・除雪の委託費用、地域行事の助成など多岐にわたります。単なる「会費」ではなく、地域のインフラそのものを支える実質的な負担だと捉えておく方が実情に近いです。
加えて、地域行事が多いのも田舎の特徴です。清掃活動(草刈り)や神社仏閣のお祭り、学校行事など、地域を維持し暮らしやすくするための活動は、直接的な出費ではなくとも、時間的なコストとして積み重なっていきます。
自然・安全のリスク
田舎暮らしの魅力は自然の近さですが、その自然は「きれいなだけ」ではありません。実際に付き合っていく必要のあるリスクとデメリットをお伝えします。
獣害
農林漁業作物の被害は多く、令和元年度のアンケート調査では、その額は約3,250万円。
獣害対策について
駆除の捕獲数については、市の許可で捕獲された南丹市全体での数として、シカ1,402頭、イノシシ281頭など、獣類鳥類の合計で1,819頭羽を捕獲しています。
これから畑や家庭菜園を始めたいと考えている方にとって、獣害は避けて通れない話です。防除ネットや電気柵の設置が前提になるケースも多く、南丹市でも地域ぐるみで防除施設を設置する事業(地元の分担金が必要)が行われています。

車で走行していても、「鹿」、「猪」は見かけます。「熊」の出没ニュースも時たま流れます。
私自身も自家菜園の野菜が鹿に食された経験があります。
身近な生物との遭遇
畑仕事やちょっとした草むらでの作業中、注意したいのがマムシです。草の陰に潜んでいて、こちらから気づきにくいのが厄介なところです。夏から秋にかけては、家の軒下にスズメバチが巣を作ることもあり、洗濯物を取り込む際に紛れ込んでいた、という話も珍しくありません。
積雪・冬の備え
南丹市は積雪のある地域で、山間部ほど雪の量も増えます。冬場は除雪作業(自分の家の前だけでなく、地域の除雪当番がある地区もあります)が発生し、都市部での暮らしとは体感がまったく異なります。

とはいえ、過度の心配は不要です。
慣れているが故に除雪車がスムーズに処理をしてくれます。雪の量にも寄りますが、一昼夜でスムーズな移動ができる印象です。
個人的には「必死に出社せねば!」という社畜体質が抜けて「無理なものはムリ」という境地に至ったのが良かった、と考えてます(笑)
災害リスク
山間部が多い地形上、土砂災害のリスクがある地域も存在します。移住前には、実際に住む予定の地区がどのハザードマップの範囲に入っているか、避難経路とあわせて確認しておくことをおすすめします。
こうしたリスクは、決して南丹市に限った話ではなく、田舎で暮らす以上どこでも向き合うことになるものです。ただ、「なんとなく自然が豊かで気持ちよさそう」というイメージだけで移住すると、最初のシーズンで面食らうことになります。事前に知っておくだけで、心構えはずいぶん変わります。
空き家バンクの落とし穴
地域おこし協力隊として3年間、南丹市内を回る中で強く実感したことがあります。
それは、「空き家バンクに載っている物件は、実際に存在する空き家のごく一部でしかない」ということです。
空き家バンクは、南丹市が公式に運営する制度で、物件情報が整理されており、外から見ても安心感があります。ただ、実際に集落を歩き、住民の方と話す機会が増えるにつれて、「空き家バンクには出ていないけれど、実は空いている家」が、あちこちにあることが分かってきました。
理由はいくつかあります。
- 所有者が「人に貸す・売る」という発想自体を持っていない(管理だけして放置している)
- 相続(登記)が済んでおらず、そもそも登録できる状態にない
- 「知らない人に貸すのは少し不安」という心理的なハードルがある
- 単純に「空き家バンクに登録する」という手続きの存在を知らない、または面倒に感じている
つまり、空き家バンクに出てくるかどうかは「その家が空いているかどうか」だけではないのです。
この3年間、移住相談や地域の集まりの場で、「実はこの家、空いてるんだけど」という話を、何度も耳にしてきました。地域の人にとっては当たり前の情報でも、外部の人にはまったく届いていない。この「情報の非対称性」こそが、田舎の住まい探しの実情だと感じています。
だからこそ、住まい探しは空き家バンクを見るだけでは終わりません。
地域のお店に通う。行事に顔を出す。移住相談窓口の担当者と関係を築く。そうした地道な関わりの積み重ねが、公式には出てこない情報にたどり着く一番の近道になります。
美山町鶴ヶ岡地域や園部町西本梅地域のように地元イベントに移住検討者向けのプログラムや相談窓口を開催する集落もあり、こうした窓口を頼るのも有効な手段です。
空き家バンクの仕組みや登録方法、具体的な探し方のコツについては、南丹市の家・土地の探し方の記事に詳しくまとめていますので、そちらもあわせてご覧ください。
仕事・収入のリアル
移住を考えるとき、多くの人が最後まで悩むのが「ここで食べていけるのか」という点です。私自身、地域おこし協力隊として3年間活動し、その後、社会保険労務士として独立するという道を選びました。この経験を踏まえてお伝えします。
地元求人の実情
南丹市内の求人は、製造業(食品・飲料メーカーの工場など)、観光・宿泊関連、介護・福祉、公共サービス系が中心です。都市部と比べると、選べる職種の幅は正直狭くなります。特に専門職・オフィスワーク系の求人は限られており、「今の職種のまま、地元企業に転職する」という選択肢は、業種によってはかなり難しいのが実情です。
一方で、京都市内への通勤が可能な立地(特に園部町・八木町エリア)であれば、今の仕事を変えずに移住するという選択肢も現実的です。この点は、後述する「おとなり移住」という考え方にもつながります。
リモートワークという選択肢
都市部の仕事を続けながら、生活拠点だけを南丹市に移すという形は、この数年で現実的な選択肢になりました。ネット環境も、CATV網(光回線)が市内全域に整備されており、リモートワークに支障のない通信速度が確保できるエリアも多くあります。
半農半X、複業という考え方
「農業だけで食べていく」のはハードルが高い一方、農業を暮らしの一部に据えながら、他の仕事や収入源と組み合わせる「半農半X」という考え方は、南丹市のような地域では現実的な選択肢です。私が話を聞いた専業農家の方も、「農業はリスクが高いので、半農半エックスが安心」「最低限の収入をもって参入した方がよい」と話していました。いきなり大きな収入を農業だけに依存させるのではなく、複数の収入源を持つ発想が、田舎での生計を安定させる鍵になると感じています。
地域おこし協力隊という選択肢
「いきなり移住して仕事を探す」ことに不安がある方には、地域おこし協力隊という制度も選択肢の一つです。自治体から委嘱を受け、任期(おおむね1〜3年)の間、地域活動に従事しながら定住に向けた準備ができる仕組みで、全国的には任期後の定住率が約70%というデータもあります。私自身、この制度を通じて南丹市での暮らしと仕事を見極める時間を持てたことは、独立という決断をする上で大きな支えになりました。

フィットネスクラブ、金融関連の仕事、地域おこし協力隊。
約23年のキャリアを経て、私は南丹市で社会保険労務士として独立するという道を選びました。都市部で積んできたキャリアを、そのまま同じ形で持ち込めるとは限りません。ただ、これまでの経験や資格を、田舎という環境の中でどう活かすかを考え直す機会にもなりました。
仕事・収入の話に「これが正解」というものはありません。
今の仕事を続ける、地元で探す、半農半Xで組み立てる、地域おこし協力隊を経由する。どの形にもリスクとメリットがあります。大切なのは、南丹市に来てから考えるのではなく、来る前にある程度のシミュレーションをしておくことだと思います。
子育て・教育、医療・介護
学校の統廃合は、すでに起きている
南丹市では2015〜2016年度にかけて、小学校の大規模な統廃合が行われました。市全体で17校あった小学校が7校に統合されています。
統廃合から半年後、1年後に行われた住民団体による聞き取り調査では、児童数が最大で約13倍になった学校もあり、「人数が多くグラウンドで十分に遊べない」「新しい環境になじめない児童がいる」「先生の目が行き届きにくくなった」といった声が、保護者・教員の双方から上がっています。
これは南丹市に限った話ではなく、少子化が進む地方では避けて通れない構造的な課題です。ただ、「小規模校でのびのび学べる」という田舎の教育イメージだけで移住を決めると、実際にはすでに統合後の、それなりの規模の学校に通うことになる可能性がある、という点は知っておいた方がよいと思います。学区や通学距離によってはスクールバス通学になるケースもあります。
医療体制
八木町には京都中部総合医療センターがあり、24時間365日体制で救急を受け入れています。地域によっては最寄りの総合病院まで車で10分程度で行ける場所もあれば、日吉町の一部エリアのように、隣接する京都市右京区の病院の方が近い、という地区もあります。
「南丹市=医療が心配」という単純なイメージよりは、実際に住む予定の地区から、どの病院に何分でアクセスできるかを具体的に確認しておくことが大切です。
将来的な介護・高齢化への視点
これは今すぐの話ではなくても、頭の片隅に置いておいた方がよいテーマです。
実際に佐々江地区のIターン・Uターン者懇親会では、「高齢になった時に一人では不安」「一人暮らし支援や免許返納後の支援体制が欲しい」という声が、住民の方から直接挙がっています。車社会である田舎では、運転できなくなった時の生活の変化が、都市部よりも大きくなりがちです。将来、自分の親を呼び寄せる、あるいは自分自身が歳を重ねていく。
そうした長い時間軸でも、この土地との付き合い方を考えておく価値はあると思います。

介護は、「今の自分」だけでなく「これから先の自分や家族」を見据えて考える必要があるテーマです。
都心部は高齢化が急速に増加し、需要の伸びに整備が追いつきにくい。一方、南丹市はすでに高齢化が進んでおり、在宅介護サービスは44社と(人材に関する課題はあるものの)”介護砂漠”のような状況ではない、とは言えそうです。
移住後のコミュニケーションについて
ここまで、行事・お金・自然・住まい・仕事・子育てと、南丹市で暮らす上での実務的な話をしてきました。ですが、正直に言うと、移住生活で一番影響が大きいのは、人とのコミュニケーションです。ここからは、地域おこし協力隊としての活動だけでなく、実際に南丹市に暮らす一住民としての体験を交えてお伝えします。
移住後に地域と馴染めるか、不安に思っている方は多いと思います。ですが実は、地域の方も同じように、移住者と馴染めるか不安に思っています。全体としては、どちらかというと移住者を歓迎する空気の方が強いというのが、私の実感です。
都会で引っ越しをしていた頃は、マンションの上下左右の住民と管理人に挨拶する程度でした。戸建てでも似たようなものだったと思います。
ところが南丹市に来てからは、まず区長さんに挨拶に行き、区長さんと一緒に地域の全戸(約20戸)に挨拶回りをしました。実を言うと、事情があって移住から3ヶ月後になってしまい、しかも訪問した半分ほどのお宅は不在で、挨拶品をポストに投函する形になりました。それでも、遅くなったことやポスト投函について、直接責められたことは一度もありませんでした。
ある日、ゴミ出しで分からないことがあり、たまたま通りがかった方に尋ねたところ、快く教えてくれました。実はその方、私がまだ挨拶回りをしていない段階だったにもかかわらず、私が移住してきたことをすでにご存知で、その場で「家呑み」に誘ってくれました。もちろん、図々しくお邪魔させていただきました。
子どもから聞いた話も印象的でした。
- 「東京にいたときは、知らない人に挨拶をしてはいけないと言われていた」
- 「でも南丹市では、人とすれ違うときは挨拶をしなさいと言われる」
同じ「挨拶」でも、都会と田舎ではまったく逆のルールが働いています。
家主さんとの会話も、田舎の感覚を教えてくれました。
庭が丸見えなので、植栽か何かで目隠しをした方がいいのでは、と尋ねたところ、返ってきたのは「そんなことをしたら、防犯上よくないよね?」という答えでした。
見られていることが、むしろ安心につながるという感覚は、都会での暮らしとは真逆でした。
田舎にはクセの強い方はいます。
ただ、それは都会にも、会社にもいえることです。クセの出方が都会とは違うので最初は戸惑いますが、「いろいろな人がいる」というだけの話で、それ以上でもそれ以下でもありません。
コミュニケーションに正解はありません。
ただ一つ言えるのは、「移住者が都会と同じ感覚のままだとうまくいかない」ということです。挨拶の仕方、距離感の取り方、プライバシーに対する考え方、都会での「普通」を、そのまま田舎に持ち込むと、ずれが生じます。
まとめ:まずは「知る」ことから
ここまで、南丹市で暮らした3年間を通して見えてきたことを、できるだけ包み隠さずお伝えしてきました。
日役や区費、年間行事の負担。獣害やマムシ、積雪といった自然のリスク。空き家探しの難しさと、口コミの大切さ。仕事や収入の組み立て方。子育てや医療、将来の介護への視点。そして何より、都会とはまったく違う、田舎のコミュニケーションの作法。
正直に言えば、これらは「田舎暮らしの魅力」を語る記事では、あまり触れられない部分です。ですが、こうした実情を知らないまま移住すると、「こんなはずじゃなかった」という後悔につながりかねません。逆に、知った上で臨めば、最初の戸惑いは減り、地域との関係も築きやすくなります。
「京都に移住したい」と考えたとき、多くの人が思い浮かべるのは京都市内かもしれません。ですが、南丹市の日吉町・美山町のように、京都府内には、もっと自然に近く、もっと人とのつながりが濃い暮らし方も存在します。それは決して「劣った選択肢」ではなく、都会とは違う軸で豊かさを測れる、もう一つの生き方です。
もちろん、これがすべての人に合うとは限りません。もう少し都会に近い暮らしを求めるなら、園部町・八木町という「おとなり移住」の選択肢もあります。自分がどれくらいの田舎の濃さを求めているのか。
それを見極めることが、移住先選びの一番のポイントだと思います。
『都会でも田舎でも、揉めるときは揉めます』。地球上のどこで暮らしても、100%の天国はありません。それでも私は、この3年間、南丹市で暮らしてよかったと思っています。
まずは知ることから。この記事が、京都移住を考えるどなたかにとって、判断材料の一つになれば幸いです。









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